聞こえていることと、行動に移せることは別

子どもが返事をしたのに動かないと、「分かっているのにやらない」「親を軽く見ている」と感じることがあります。けれど、言葉が耳に入ること、意味を理解すること、必要な行動を選ぶこと、実際に始めることは、それぞれ別の段階です。

例えば「早く準備して」と言われても、何をどの順番で行うのかを組み立てにくい子がいます。複数の指示から一つを選べない、今していることから注意を移しにくい、失敗を強く不安に感じる場合もあります。

診断名の有無だけで関わり方を決めるのではなく、目の前の子どもがどの段階で止まっているのかを見ます。

強い反応も、本人からの情報になる

声をかけた時に怒る、黙る、ふざける、逃げるという反応があると、問題行動だけを止めたくなります。まずは安全を守りながら、その反応がどんな条件で起きやすいのかを観察します。

急な予定変更だった、言葉が抽象的だった、人前で注意された、疲れや空腹が重なっていた、できないことを知られるのが怖かったなど、本人の受け取り方やコンディションが関係しているかもしれません。

反応の背景は一つに決めつけません。「この子は発達障害だから」と説明を終わらせず、比較的伝わった場面との違いを探します。

一度に一つ、行動が見える言葉にする

「ちゃんとして」「急いで」「片づけて」のような言葉は、大人同士では通じても、子どもには完成形が見えにくいことがあります。「ランドセルから連絡袋を出そう」「青い箱にブロックを入れよう」と、今する行動を一つだけ伝えます。

説明を重ねるほど分かりやすくなるとは限りません。伝えた後に少し待ち、始まらなければ同じ言葉を大きな声で繰り返すのではなく、指さし、写真、予定表、実物など別の手がかりを加えます。

選択肢を出す時も、「どうしたい?」と広く聞くより、「着替えと歯みがき、どちらから始める?」と二つに絞ると選びやすくなる場合があります。

伝える内容だけでなく、届きやすい条件を整える

動画を見ている最中、きょうだいが話している時、帰宅直後で疲れている時には、同じ言葉でも届きにくくなります。正面から目を合わせることが助けになる子もいれば、視線を求められると内容を受け取りにくくなる子もいます。

名前を呼び、今の活動が一区切りするのを待つ、次の予定を事前に伝える、静かな場所で話すなど、受け取りやすい条件を試します。うまくいかなかった方法を親の失敗にせず、「この条件では難しかった」という情報として残します。

できた結果より、伝わった手がかりを残す

一度うまくいった声かけが、いつでも同じように使えるとは限りません。その日の体調、課題の難しさ、周囲の刺激によって反応は変わります。

「短く伝えたら動けた」だけでなく、「写真を見せた」「始める五分前に予告した」「一人の時に伝えた」まで記録すると、その子に合う条件が具体的になります。子ども本人にも「どんな伝え方なら分かりやすい?」と聞き、一緒に調整します。

家庭、学校、支援先で共有する時も、「言うことを聞かない」ではなく、「口頭で二つ以上伝えると止まりやすい」「予定を紙で見せると選べる」と、観察できる形で伝えます。

困りごとが続く時は、環境を一緒に見直す

生活や学習、人との関わりで強い困りごとが続く時は、家庭だけで声かけを工夫し続けなくて大丈夫です。学校、地域の発達相談、医療・福祉などに、どんな場面で何が起きているかを具体的に伝えてください。

Orange Uでは、決まった声かけを当てはめるのではなく、子どもの受け取り方、余力、やりたいこと、環境という視点から反応を整理します。本人にも家族にも無理の少ない方法を、小さく試しながら見つけていきます。

ここから先は、家族ごとに違います。

コラムで紹介したのは、Orange Uで扱う考え方の入口です。 実際の見立てや声かけは、年齢・特性・その日の状態・家族関係によって変わります。 講座と相談では、あなたの家庭に合わせて一緒に組み立てます。

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