何度も言うほど、親も子どもも苦しくなる

一度で動いてくれないと、親は同じ言葉を繰り返し、だんだん声が大きくなります。出発前や夕方の忙しい時間なら、待つ余裕がなくなるのも自然なことです。それでも動かないと、「もう何回言わせるの」と責めたくなることもあります。

子どもは、最初の指示を受け取れないまま次の言葉が重なると、何から始めればよいか分からなくなる場合があります。注意されることへの不安が強くなり、固まる、別の話をする、その場から離れるという反応になることもあります。

目標は、一度で必ず従わせることではありません。まず、どんな伝え方なら最初の一歩が分かるのかを探します。親が伝え方を変えることは、子どもの言いなりになることではなく、必要な行動が届く入口を整えることです。

「聞いていない」の中で、どこが止まっているかを見る

指示を受けて動くまでには、呼びかけに気づく、言葉を聞く、意味を理解する、覚えておく、順番を決める、今の活動から切り替える、という複数の動きがあります。返事があっても、最後まで理解できているとは限りません。

例えばゲームへ集中していて声そのものに気づかない子もいれば、「きれいにして」の範囲が分からない子もいます。「歯を磨いて、着替えて、水筒を入れて」と続けて言われ、最初の一つだけ抜けることもあります。疲れ、空腹、周囲の音、その日の不安によっても受け取りやすさは変わります。

うまくいかなかった時は、「何を言ったか」だけでなく、どの距離から伝えたか、本人が何をしていたか、一度にいくつ頼んだかを振り返ります。できた場面との違いが、その子に合う伝え方の手がかりになります。

話し始める前に、注意がこちらへ向く時間をつくる

別の部屋から大きな声で呼ぶより、できる範囲で近くへ行き、名前を呼びます。手を止めてほしい時は、いきなり用件を重ねず、「今から一つ伝えるね」と知らせ、顔や身体がこちらへ向くのを少し待ちます。目を合わせることを強く求める必要はありません。

動画や工作などに集中している最中は、聞こえていても注意を移すまで時間がかかることがあります。急ぎでなければ区切りを確かめ、「このページが終わったら話すね」「あと五分で声をかけるね」と予告します。急ぐ時は、「止まって」「熱いよ」のように、安全に必要な言葉だけを短く伝えます。

テレビの音や家族の会話が重なる場所では、一時的に音を下げる、本人の視界へ入るなど、受け取りやすい環境も整えます。声量を上げる前に、言葉以外の刺激が多すぎないかを見直します。

一度に一つ、動きが見える言葉で伝える

「早くして」「ちゃんとして」「片づけて」は、大人には通じても、子どもには最初の動きが見えにくい言葉です。「靴下を履こう」「机の鉛筆を筆箱へ入れて」のように、今してほしい行動を一つだけ具体的にします。

複数の用事がある時も、まず一つを伝え、できたら次へ進みます。毎日同じ流れなら、写真や短い言葉の一覧を置き、親の声かけを「全部やった?」から「次はどこを見る?」へ変える方法もあります。言葉より、実物を見せたり一度やって見せたりする方が分かりやすい子もいます。

禁止だけでは、代わりに何をするかが残りません。「走らない」だけでなく「ここは歩こう」、「散らかさない」ではなく「ブロックを箱へ入れよう」と伝えます。できる行動を示すと、子どもが次の一歩を選びやすくなります。

伝えた後は少し待ち、動き始めを見つける

指示の直後に返事がなくても、理解して行動へ移るまで少し時間が必要なことがあります。すぐに同じ言葉を重ねず、数秒待って様子を見ます。分からなそうなら、声を強くするのではなく、言葉を短くする、指さす、実物を見せるなど、届け方を一つ変えます。

全部終わるまで待たず、動き始めを見つけます。「ランドセルを開けたね」「テレビを止められたね」と、できた行動をそのまま伝えます。大きく褒められるのが苦手な子なら、うなずく、ありがとうと伝える、次へ静かにつなぐ方法でも構いません。

うまくいかない日があっても、その一回で方法を否定しません。声をかける時刻が遅かったのか、課題が大きかったのか、本人に余力がなかったのかを見直し、次は一つだけ条件を変えて試します。

家庭だけで続けにくい時は、学校や相談先と共有する

家庭だけでなく学校でも指示を聞き逃す、課題へ取りかかれない、何度も叱られて自信を失っているなど、生活や学習への影響が続く時は、担任や特別支援教育コーディネーター、スクールカウンセラーへ相談できます。必要に応じて地域の発達相談窓口や医療機関へつなぐ方法もあります。

相談する時は、「言うことを聞かない」だけでなく、集団への指示では気づきにくい、短い言葉なら動けた、見本があると分かった、切り替えに時間が必要だったなど、具体的な場面を伝えます。家庭と学校で似た手がかりを使えると、本人も迷いにくくなります。

Orange Uでは、指示が通らない様子を性格や反抗だけで決めず、言葉の受け取り方、注意の向き、見通し、環境を一緒に整理します。親が我慢を重ねるのでも、子どもを強く従わせるのでもなく、その家庭で続けられる伝え方を探します。

ここから先は、家族ごとに違います。

コラムで紹介したのは、Orange Uで扱う考え方の入口です。 実際の見立てや声かけは、年齢・特性・その日の状態・家族関係によって変わります。 講座と相談では、あなたの家庭に合わせて一緒に組み立てます。

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